大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京高等裁判所 平成元年(行コ)35号 判決 1989年7月27日

主文

一  本件各控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実

一  控訴代理人は、「原判決を取り消す。被控訴人は訴外有限会社ルイードの申請に基づき昭和六二年九月四日付け第一四三〇号をもってした原判決添付物件目録(但し、六行目の「二〇三六番地三」を「二〇三六番三」と訂正する。以下、同じ。)記載の土地上に建築予定の建築物についての建築確認処分は、これを取り消す。訴訟費用は、第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は、主文第一項同旨の判決を求めた。

二  当事者双方の主張は、原判決の事実摘示「第二 当事者の主張」(原判決五丁裏五行目から一三丁表一〇行目まで並びに同添付物件目録及び「建物の概要」。但し、原判決九丁表五行目の「規定以外(五六条の二)」を「規定(五六条の二)以外」に改め、同一三丁表二、三行目の「その適合性についても」を削る。)と同一であるから、これを引用する。

三  証拠関係<省略>

理由

まず、原告適格について判断する。

行政処分取消しの訴えは、当該処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り提起することができる(行政事件訴訟法九条)が、この法律上の利益を有する者とは、当該処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがあり、その取消しによってこれを回復すべき法律上の利益をもつ者に限られると解されている。そして、右にいう法律上保護された利益とは、行政法規が私人等権利主体の個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課していることにより保障されている利益であって、それは、行政法規が他の目的、特に公益の実現を目的として行政権の行使に制約を課している結果たまたま一定の者が受けることとなる反射的利益ないし事実上の利益とは区別されるべきものであると解されている。

そこで、控訴人らに原告適格があるのは、控訴人らが法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれがある場合であり、本件行政処分の根拠法規たる建築基準法が控訴人らの個人的利益を保護することを目的として行政権の行使に制約を課している場合であることになる。ところが、控訴人らが侵害されたと主張する法律上保護された利益とは、良好かつ健全な住居環境・教育環境の保護を受けることのようである(控訴人らは、右を法律上の権利として主張しているが、明確な根拠に欠け、これが法律上の権利として存在しないことは明らかである。)が、このような利益は、住民が共通にもつ一般的な利益であって、前述の公益の保護の結果として生ずる反射的利益ないし事実上の利益であるに止まるから、右の公益的保護が建築基準法上保護の対象になっているかどうかを論ずるまでもなく、個人的利益として建築基準法上保護の対象となっていると解する余地はないというべきである。また、控訴人らは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律及び「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律施行条例」が建築主事の審査対象法令に含まれ、右両法令により控訴人が善良の風俗若しくは清浄な風俗環境を害する行為又は少年の健全な育成に障害を及ぼす行為から保護されるべき利益を有すると主張する(控訴人らは、右も法律上の権利として主張しているが、前同様これが法律上の権利として存在しないことは明らかである。)が、右両法令が建築主事の審査対象法令に含まれないことはさておいても、右利益も前同様右両法令による公益の保護の結果として生ずる反射的利益ないし事実上の利益であり、個人的利益として両法令の保護の対象となっているということはできないものである。以上のほか控訴人らが何らかの法律上保護された利益を有するとの主張もないので、控訴人らに原告適格を認めることはできない。

よって、その余について判断するまでもなく、本件訴えは不適法であるから、却下すべきものであり、以上と同旨の原判決は相当であって、本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 渡邉卓哉 裁判官 大島祟志 裁判官 土屋文昭)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例